2級建築士受験講座講師のブログ

二級建築士試験受験講座で製図対策の講師をやっています。

2級製図試験 分析9 外部スロープと車椅子への配慮(応接室)

2級製図試験 分析9 外部スロープと車椅子への配慮

(応接室、多目的便所への配慮)

 

9月15日に行われた今年の課題の分析ですが。

あくまでも私個人の私的分析です。

分析連載の最後(明日)に、その結果で作った解答案の掲載させてください。

(私の私的な単独案です)

 

分析の最後にスロープと車椅子への配慮の問題です。

 

じつは、このことが、内部も外構も、プランの分かれ目になる場合があります。

私としても、とても注目している要素です。

なので、最後の項目としました。

 

ポイントは要求室の下の枠の (注2) です。

「事務所部分の応接室及び多機能便所は

車椅子使用の来客も配慮する。」

 

この一行でどこまでを準備するかという事です。

駐車スペースは車椅子対応の、幅3500㎜を用意する上でのこと。

 

これまでも車椅子に関する課題は出題されていますが、

じつは、過去の車椅子課題と比較すると、今回は、かなり、ザツな表現なのです。

 

 

平成29年度でも、平成26年度でも

車いす用のスロープはや車椅子の回転用平場の大きさ

さらには、スロープ前後のスペースの大きさなど

車いす用のスロープの条件をしっかり出題で指示しています。

 

さらに、指示は建物内部にも及んでいます。

平成26年度では、建築物内部の玄関框部分も高低差も無くすことを指示。

平成29年度では、車いすのための段差解消あるいは対応のための広さを

玄関に有効数値で求めるなど具体的です。

 

それらと比較すると今年度は、具体性が無く、かなり消極的

 

車椅子利用者の来客があって突発的に必要になった場合に

無理なく対応できる範囲での配慮というイメージとも受け取れます。

 

(逆に上記の2つの年度の場合の設定は明確に日常的な車椅子でした。)

 

 

そうなると考えられる考慮の方法は大きく分けて3つです。

 

1つめは、木造の床の部分の高さ付近(480mm)まで

スロープで上げてしまう方法

これは平成29年度出題の方式です。

車いす対応は完璧ですが、長いスロープが必要になる難しさがあります。

当然スロープにも十分な幅や形状が必須です。

 

 

2つめは、玄関を広め(有効で15001500程度以上)にして、

玄関の段差を昇降可能な1段にする方法。 

「段差が無いほうが良い」ことはありますが、昇降の前後にスペースがあれば、

車いすは後方からバーを押し踏むサポートを受ければ

1段を上がることが機械機能的に可能です。

この方法は平成29年度の出題の考え方と同じと言えます。

未確定の来客を想定程度であれば、現実的な方法であるとも言えます。

ちなみに2段を上がる案は不成立です

スロープで玄関土間まで350mm前後まであがっておくことが必要です。

 

下のブログ様から、段差の持ち上げ例のイラストをお借りします。

車椅子介助の注意点を元機能訓練指導員が徹底解説! | | 暮らしのお悩み解決ブログ

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3つめは

玄関土間の延長上に応接室と多機能便所を作ってしまう事。

これは平成22年度の出題に発想が同じです。

玄関土間に接客スペースを計画し、玄関土間までのスロープを作ります。

(平成22年度では高齢の母親のお友達が来訪するイメージでした。)

この方法は気を付けて作らないと不用意に屋内段差が出来てしまいます。

内階段あたりで安全をうたっているのであれば、

日常動線での不用意な屋内段差はちょっとしたミスマッチにはなりそう。

また、便所が下足になるので、来客は良いのですが、

従業員の日常には少しわずらわしさがあるという点はあります。

 

私の勤務する講座では1つめの方法で解答案を作成しました。

必要な高さまでスロープで上げてしまう方法です。

しっかりとしたスロープ設計が必要ですが演習はしていましたので。

 

私の個人的解答案では3つめの方法を採用して作りました。

個人的に平成22年度のプランが好きで、

講座のトレーニング課題でも何回も採用していましたので。

 

 

 

それにしても、です。

ここを受験者の判断に任せるというのは、教えるという立場では、

今回の中で一番悩ましいと感じました。

出題で具体的に指示してもらいたかったという思いはあります。

ただ、逆にいうと、この部分での判断の分岐や選択の評価が

合否を分断する分岐点にはならないという意味でもあります。

選択した方法なりに成立していることが重要だと思います。

 

加筆で,もう一点。

応接室、トイレ部分の下足上足の件です。

事務所全体が上下足を明確には指定していない点もあります。

車椅子の上足、下足は、利用者によってさまざまな対応方法があります。

今回の出題ような出し方では、一般常識範囲での判断で良いと私は考えています。

 

明日は、独自の解答案を掲載させていただきます。

そして、その後自分なりに判定基準の要素を考察して行きたいと思います。

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